1月9日 義父(93歳)老衰にて永眠す

  炉より出づるお骨の真白き美しさ九十三年生きて穢れず

  花々に埋もるる顔の優しかり老衰とふは美しきもの

  擦り切れし黒き聖書を胸元に置きて棺のふたを閉ぢたり

  ハンセン病施設に寄付を続けたる数十年間ぼろ纏ひつつ

  消えてゆく命思ひゐしか冬の陽に素足かざして眺めゐたりき

  にこやかな顔に過ごせる義父の日々最期の近きを誰も思わず

  友人も皆逝きたれば寂しきとお悔やみ欄を眺めゐし義父

  寝ねしまま逝きたる最期は実直な義父に賜る褒美なるべし


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