谷川も木橋も落ち葉に覆はれて下行く水の音微かなり 山道を覆ふ落ち葉のさまざまに重なり合ふを踏み行く楽し 水楢のもみぢひときは明るきを見上げる空の深く澄みたる 拾ひたる唐松の枝を杖にして沢のいくつを渡りて登る 傍らにすず竹の群れ清清し落ち葉散り敷く信濃の山に 幾重にも連なる山の彼方には故郷のあり雲流れ行く 林抜け開くる断崖絶壁の真正面なる雪の浅間嶺 葉の落ちて明るき林のおちこちに真弓実りてこげら啄ばむ 登山道外れて休めば晩秋の風邪は冷たく耳元に鳴る 傾ける日に輝きて落葉松のさらさらと散る山よさよなら |