三日前雪の消えたる山といふ猪追ひの猟師も登る

   
干反りたる落ち葉の深く積む斜面登り来たりて呼吸整ふ

   
杉木立少し開くる山肌にやはやはとして春の陽届く

   案内の爺の指差す岩陰に白く小さき花を見つけぬ
 

   
重なれる落ち葉の間に俯ける節分草は未だ幼し

   逆光に透ける真白き花びらの奥に静もる紫のしべ


   
あの辺り東いちげも咲くと指す爺の後ろをかもしかが行く

   
かもしかは立ち止まりては振りかへり未だ芽吹かぬ谷へと
   消えぬ

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