茜さす東の空のひとところ輝き増して日は昇り来ぬ
峠路を下れば広き関東の平野あまねく朝日浴びをり
家々の庭に山茶花咲き初めて故郷はやさしく吾を迎ふる
ふるさとの世代も変わりどの家の誰かは知らね会釈してゆく
早々と土産の野菜準備して父母は軒端に出でて待ちをり
母の味引継ぎくれし義妹の祭り料理の里芋うまし
妹の小さき棺見送りて母の泣きいし垣根も古りぬ
遠き日に遊びし小川に水見えず荒草あまた実を結びをり
柔らかき関東ロームの畑には緑の野菜が冬を越すらし
終の日の話題もいずれ遮らず聞かねばならぬか父母老い深む

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