アカシヤの香にむせ返る道を来てせつなきまでに旅に焦がるる
緑色のしずくに濡れて鳴きいむか郭公の棲む森に雨降る
新緑の谷に風生(あ)れ百万のひと葉ひと葉に光が踊る
蜘蛛の巣に白き小花をうち散らし山田への道がまずみ揺るる
メロン苗三本植えて大仕事なしたるごとく熱き茶を飲む
ささやかな怒りも込めて減反の田にこすもすの種こぼしゆく
消去キーに消してしまひし歌いくつ主婦に戻りて厨辺に立つ
短歌目次